※本記事は「LITALICO仕事ナビ」より転載しております。
ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、ストレスに対処し、上手に付き合っていくための方法や考え方のことです。自分に合うストレス対処法を知ることは、安定して長く働き続けるうえでも役立ちます。
ストレスマネジメントを行ううえで大事なことは、第一に「自分で自分のストレスに気づくこと」、そのうえで「ストレスの具体的な対処法を知り、実践すること」です。
次章以降で、詳しく説明します。
ストレスの正体を知ろう
自分で自分のストレスに気づくために、ストレスの正体を知っておきましょう。
私たちの心や体は、外部からの刺激を受けて反応し、それによってストレスを感じます。
ストレスの原因となる様々な刺激を「ストレッサー」、ストレッサーの刺激により起きる反応を「ストレス反応」といいます。
ストレスの原因となる様々な刺激を「ストレッサー」、ストレッサーの刺激により起きる反応を「ストレス反応」といいます。
ストレッサー
ストレッサーは主に5つに分けられます。避けられるストレッサーもありますが、避けづらいストレッサーも存在します。
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身体的ストレッサー(睡眠不足、体調不良など)
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心理・社会的ストレッサー(人間関係、多忙さ、仕事のプレッシャーなど)
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物理的ストレッサー(気温、照明や騒音など)
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科学的ストレッサー(有害物質、大気汚染など)
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生物学的ストレッサー(ウイルス、花粉など)
ストレス反応
ストレスを受けたとき、次のような心身に起こる変化をストレス反応といいます。
身体的反応
過食、だるさ、疲労、肩こり、食欲不振、めまい、不眠、動悸、頭痛など
心理的反応
集中力の低下、うつ気分、不安、イライラ、物忘れ、落ち込み、うっかりミスなど
行動的反応
過食、生活の乱れ、性欲減退、暴言暴力、遅刻や欠勤、作業能力低下など
ストレス反応が起きること自体は正常な現象ですが、慢性化するとさまざまな身体疾患や精神疾患を引き起こすことが知られています。
ストレス反応を自覚できても、その要因であるストレッサーにはなかなか気づきにくいものです。ストレスマネジメントでは、ストレス反応が起こったとき、その要因を自分で把握することも大切な目標になります。
ストレスマネジメントの方法
ストレスマネジメントは、大きく「セルフモニタリング」と「ストレスコーピング」の2段階に分けて行います。
セルフモニタリング
自分の体調や気分の変化を継続的に記録することを「セルフモニタリング」といいます。
これを行うことで自分がどういうときにストレスを感じ、そのとき心身にどんなストレス反応が起こるかを知ることができます。また自分のストレスや不調を客観的に分析することから、セルフモニタリング自体にも気持ちが楽になるなどの効果が期待できます。
これを行うことで自分がどういうときにストレスを感じ、そのとき心身にどんなストレス反応が起こるかを知ることができます。また自分のストレスや不調を客観的に分析することから、セルフモニタリング自体にも気持ちが楽になるなどの効果が期待できます。
ストレスコーピング(対処法)を考える
ストレスコーピングは、ストレッサーやストレス反応の負担を減らすための対処法です。 コーピングにはいくつかの種類があり、それぞれストレスへのアプローチの仕方が異なります。
問題焦点型コーピング
現在直面している問題や状況に立ち向かい、直接的な解決を目指したり具体的な対策を立てるアプローチです。
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例:職場での環境調整、仕事内容の調整など
情動焦点型コーピング
問題そのものの解決ではなく、自分の気持ちや感じ方、考え方を調整するアプローチです。例えば出来事のプラスの側面に注目する、誰かに話して感情を吐き出すといったものです。
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例:アサーションやリフレーミングのような認知(捉え方)を変える方法
ストレス解消(発散)型コーピング
ストレス反応そのものに対処するアプローチで、心身の疲れを取り除いたり発散するやり方をいいます。
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例:リラクゼーション、ストレッチや運動、睡眠、自律訓練法やマインドフルネスなど
ストレスマネジメントの実践例
ここでは具体的な例を見ながら、実際にストレスマネジメントを実践する方法をご紹介します。
①セルフモニタリング
最近ストレスを感じた場面を思い出したり、現にストレスを感じている状況について、次の3点を紙などに書き出してみます。
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今どんな状況にあるか
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何がストレスの原因(ストレッサー)になったか
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そのストレッサーにより、どんなストレス反応が起こったか
これを実際にやると、次の例のような形になります。
ストレスを感じた(感じている)状況
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仕事が多いとき
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思い通りにスケジュールをこなせないとき
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仕事について人に何かを言われたとき
ストレッサーは?
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タスク量の多さそのもの
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業務のプレッシャー
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疲労
どんなストレス反応が起こった?
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落ち込んだ(心理的な反応)
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暴飲暴食してしまった(行動的な反応)
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肩こりがひどい・不眠(身体的な反応)
②ストレスコーピング(対処法)を考える
まず「これをしたら気分が良くなるだろう、楽しいだろう」や、「これで問題が解決できるだろう」といったものを思いつく限りリストにまとめてみます。 なぜ「思いつく限り」かというと、置かれた状況やストレスの性質によって、何が使えるか、何が適しているかが変わるためです。可能な限り多くのコーピングレパートリーを持っておき、ストレスがあるときにリストの中から出来そうなものを選んで実践します。
実践するときに重要なのは、自覚的にコーピングを行うことです。「自分はしっかりストレスに対処している」という意識や感覚を持ちましょう。特にストレス解消型コーピングは無自覚に行っていることが多いものですが、これも自覚的に行えると良いでしょう。
実際に、コーピングを挙げてみた例を見てみましょう。
問題焦点型コーピング
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時間管理を見直す
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仕事量を調整してもらう など
情動焦点型コーピング
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大変な仕事を任されているのはそれだけ信頼されているからだと考える
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上司に注意されるのは、嫌われているからではなく、期待されているからだと考える など
ストレス解消型コーピング
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ヨガ
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ストレッチ
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アロマ
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入浴
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音楽を聴く
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マッサージを受ける など
コーピングの方法はさまざまありますが、その中から自分にあった方法を選ぶことが大切です。また一人で行うだけでなく、仲間や理解者と一緒に行ってもよいでしょう。
ストレスマネジメントを詳しく学びたいとき
ストレスマネジメントに関する書籍や研修を活用すると良いでしょう。書籍を選ぶときは、セルフモニタリングを書き込んだりコーピングリストを作れるようなワークブックとして使えるものがおすすめです。
また、障害がある人向けの就職サポートを行う福祉サービス「就労移行支援」でも、多くの事業所でストレスマネジメントを学ぶことができます。
まとめ
ストレスマネジメントを学び自分で自分のストレスに対処する力を身につけることは、長く働き続けるうえでも重要です。
対処法にはさまざまなものが考えられるので、日常に習慣として取り入れやすいものを試してみてください。
ただし、すでに心身に慢性的な不調があらわれているときは治療が必要な場合もあります。そのようなときはストレスマネジメントでの自己解決だけに頼らず、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。
監修 : 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授(応用行動分析学)
公認心理師/臨床心理士/自閉症スペクトラム支援士(EXPERT)
LITALICO研究所 客員研究員
公認心理師/臨床心理士/自閉症スペクトラム支援士(EXPERT)
LITALICO研究所 客員研究員