1 原因
最近、「発達障害」という言葉をよく耳にしますが、発達障害とは、アスペルガー症候群や高機能自閉症、ADHD(注意欠如/多動性障害)、LD(学習障害)などの総称をいいます。そのため、発達障害といえども、それぞれの特性は異なりますし、また合併することもあります。
発達障害の原因は、親の育て方や家庭環境などの環境要因が直接の原因ではなく、脳の問題(前頭葉、間脳、小脳、海馬、偏桃体などの機能の低下)が関係しているといわれていますが、脳のどこにどのような障害があるのかまだ十分に解明されていません。
2 主な症状と気づき始める時期
発達障害に気づき始める時期は、障害によっても異なりますが、自閉症では名前を呼んでも反応がなかったり、言葉の発達の遅れや視線が合わないなどの症状が2歳頃にはみられます。アスペルガー症候群は、知らない人にも平気で話しかけたり、大人びた言葉遣いをしたり、他の子どもと上手く遊べず喧嘩することが多いなどの特徴がみられますが、3歳児健診でも気づかれないこともあります。ADHDの場合は、落ち着きがない、手や足をいつも動かしたり、席に座っていられない、すぐに気が散る、順番を待てない、などの特徴がみられ、小学校入学後に顕著となることが多いようです。LDは、全般的な知的能力は標準的に発達していますが、読む、書く、計算、推論、運動など、ある特定の分野だけが著しく劣っており、小学校入学以降に気づき始めます。
3 大人の発達障害
また、最近大人の発達障害が知られるようになってきましたが、知的な遅れを伴わないアスペルガー症候群やADHDは見逃されやすい傾向があります。そのため、大人になってから初めて気づくこともあります。職場を見まわしてみて、「ちょっと困った人」や「ちょっと変わった人」はいませんか?例えば、デスクがいつも書類や物で溢れ片づけられない、忘れ物、遅刻、ミスが多い、約束や時間を守れない、すぐにキレる、挨拶やコミュニケーションがとれない、状況を考えず思ったことをすぐに口にしてしまう、人との距離感が妙に近かったり他人行儀だったりする、落ち着きがない、段取りが悪い、等々。発達障害は大人になってから突然発症するものでも、成長するにつれ治るものでもありません。子どもでも大人でも発達障害の特徴は同じですが、社会人になると子ども時代とは異なり自己責任で行わなければならないことが増えてくるため、職場での評価が低く自信をなくしたり、抑うつ状態になり、精神科に受診したら発達障害と診断されるといったケースも多いのです。
まずは、発達障害の確定診断を受け、本人がその事実を認め受け入れることです。そして、周囲(家族や職場)の人にもそのことを知ってもらい、理解や協力を求めることが本人にとっても周囲の人にとっても非常に有益です。職場であれば、上司と自分の得意な領域と不得意な領域を踏まえて、どのような点に配慮してもらう必要があるのか、具体的な対策を話し合うことが大切です。
発達障害の診断を受けた人の多くは、自分の努力不足や怠け者のせいではなかったことへの「安心感」や「自責感の軽減」を体験するようですが、一方で脳に機能的障害があると知り、絶望したり、悲嘆にくれる人もいます。そのような場合には、カウンセリングを受けたり、同じ経験や苦痛を味わった仲間と語り合う「自助グループ」に参加することも有効でしょう。
発達障害のある人は、脳の発達がアンバランスなことで様々な生きづらさも抱えていますが、優れた才能を持つ人も多く、ベートーヴェン、モーツァルト、エジソン、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ピカソ、ダリといった歴史に名を残した偉人や天才も発達障害だったといわれています。
生きづらさの原因がわかれば対策を講じることができますので、心あたりのある方は早めに専門医へ受診しましょう。